J.A.T.P.(Jazz At The Philharmonic)は、1983年まで続いた伝説のジャズ公演です。まだ戦争中だった1944年、ロサンゼルスでの第1回公演が大成功を収め、その後全米ツアーを皮切りに一世を風靡し、興行主のノーマン・グランツは、Verve (ヴァーブ)やPablo(パブロ)といった名門レーベルを立ち上げました。
そのステージはスウィングやバップのジャムセッションでした。日本では1953年に東京と大阪で初めて開催され、東京公演のライブLP盤(写真左: J.A.T.P. In Tokyo – Live At The Nichigeki Theatre 1953)は、いま聴いてもワクワクさせてくれるだけでなく、戦後のジャズ全盛期にタイムスリップさせてくれるのです。
来日したのは、エラ・フィッツジェラルド(Vo)、オスカー・ピーターソン、レイモンド・チュニア(P)、ハーブ・エリス(G)、レイ・ブラウン(B)、ジーン・クルーパ、J. C. ハード(Ds)、ロイ・エルドリッジ、チャーリー・シェイヴァース(Tp)、ビル・ハリス(Tb)、ウイリー・スミス、ベニー・カーター(As)、ベン・ウェブスター、フリップ・フィリップス(Ts)のレジェンド達でした。
既に神の領域に到達していたバディ・リッチはJATP常連ドラマーでしたが、来日しませんでした。もちろん来日したジーン・クルーパやJ. C. ハードもトップドラマーでしたが、がっかりした日本のファンは少なからずいたのではないでしょうか。
ちなみにその前年の1952年、NYのカーネギーホールで開催された第15回JATPのライブLP盤(写真右: Norman Granz’ Jazz At The Philharmonic Vol. 15)では、ジーン・クルーパとバディ・リッチのドラムバトルが収録されているのですが、会場はまるでボクシング世界ヘビー級タイトルマッチかと思うほどの熱狂ぶりです。
しかし栄枯盛衰は世の習いと言われる通り、これだけ隆盛を極めたジャズでしたが、本場アメリカではまずスウィングが、そしてバップも下火になっていきました。一方、ヨーロッパと日本にはまだ根強いファンがいましたが、それでも1983年に開催された30年ぶりの日本公演が、最後のJATPになってしまいました。
レーベルのヴァーブやパブロも紆余曲折を経て、ユニバーサルミュージックに吸収されましたが、2017年にユニバーサルミュージックが、34年の歳月を経て日本でJATPを復活させたのです(出演:八代亜紀/寺井尚子/桑原あい、@東京三越劇場)。古いスタイルにはこだわらない日本発新生JATPの誕生でした。
そして2018年も、10月31日(水)にJATPが開催されます(出演:佐藤竹善×上妻宏光/桑原あい ザ・プロジェクト/高岩遼、@東京日本橋三井ホール)。今年も日本ならではの素晴らしいステージになりそうです。